読書めも①-『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと 』 川上量生

コンテンツってなんなんだろうなー、
「勝ち組なジブリ」ってなんだろうなー、
クリエティブってなんなんだろうなー。

いい具合にぐつぐつと悩みに詰まった中堅層WEB屋が、ふと手にとったりしたこの一冊。

ジブリの鈴木P見習いをしていたドワンゴ会長の川上さんが、コンテンツ業界の神であるジブリにもぐりこんで、コンテンツとはクリエイティブとは何かを考察。

神々のいる神話世界(←ジブリ信者にとって)の「中」の話をもとに、ガッツリ理系な「論理的な分析」で斬っていくのでなかなか楽しい。

てか、こぼれ話のエピソードも、いちいちジブリのビッグネームなのでそれだけで説得力がある感じがするからずるいよね。笑

読後に印象が強かったエピソードをいくつか。

宮さんはね 、好きなものを大きく描くんだよ 。

つい先日行ってきたヨーロッパ旅行で強く思ったこと。
心のシャッターにまさるものは本当にないのねと。

ドーンと迫力のある建物だったり、
目の前に広がる雄大な景色だったり、
大きな月だったり。

目の前のスケールに感動してカメラを向けるたびに実際に撮れた写真におさまる画像が、ぜんぜん大きさが違ってガッカリ。
つか逆に人間の目ってすごいなと。

「宮さんはね、好きなものを大きく描くんだよ」

というのが鈴木プロデューサー談。
好きなものが大きい、というのは、興味のあるもの=視野の中央部分の視力がよいという人間の目(脳)の構造そのものなのだそうで。でもって著者の定義では、クリエイターというのは、脳にあるヴィジョンを描くことができる人としているけど、それが無意識レベルでできる尋常じゃない人、それが宮崎駿なのかと。

やはり天才すぎる。(そういえば湯婆婆の頭めちゃデカかったな…w)

UGCはワンパターンになりやすい

UGC=User Generated Contents。
YouTubeとかVineとか、ユーザーがコンテンツを創る時代。無限のクリエイターたち!無限のリソース!さぞや多様なコンテンツであふれる世界になるだろう!という予測に反し、UGCでは実際はワンパターン傾向になるのだとか。

「小説家になろう」というUGCサービスを例に具体的に紹介。結局、読者は人生のリセット願望から「転生モノ」が好きで、どう転生するのか?など、目的に到達するプロセスはどうでもよいのだとか。(AVもひとつの例にたとえていましたが。まあ確かにわかりやすいw)書き手も結局、自分の作品を読んでもらいたくなるから、読者が好む一定のパターンに収束していくと。

「競争をおこなえばおこなうほど多様性は減っていくのです」

旬な話題で言えば、#非公式エンブレム とかが頭に浮かんだり…。
誰もが自由にオープンに参加できる一般公募が必ずしも正義ではないんじゃないかなと思っている派なので、タイムリーでもあり、すとんと腑に落ちるエピソード。

美術史のサイクル

高畑勲監督の神がかりエピソードも多く紹介されてる。

「主人公に思い入れるのではなく、それぞれの登場人物に対して『この人はこういうことを考えているんだろうな』ということを思いやる」というタイプの「思いやる映画」が高畑さん、というエピソードも捨てがたいのですが。

「アーカイズム、クラシック、マニエリスム、バロックという流れになり、美術の歴史はこの四つのサイクルの移り変わり」という高畑論。

「基本的な表現方法が古典的名作として確立されたあと、それを発展させて、より細部にこだわるのがマニエリスムであり、それはマンネリズムに変化しうる」とか。

聖母マリア像を例にとり、細部にこだわるマニエリスムのなかで、「本来のテーマであった祈りはどこかにいってしまい残ったのはたんなる女体」で、そのあとは、ぎらぎら飾り立てるバロックに移行するそう。

表層のディテールだけを追っていくことで、本質的な”デッサン”は見失われていくのね、と、わかったようなつもりになってみる。

最後に感想

ちょうど、ヨーロッパ旅行した前後だったり、コンテンツ業界でのお仕事についていろいろ考えていた時期でもあったので個人的になにかとタイムリーな内容の1冊でした。

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勝手なイメージ: 天上界の神々(宮崎駿/高畑勲監督)の世界と、
その世界を語る大天使鈴木Pから予言を受ける川上見習いの図w

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