[振り返りレビュー]ルーベンス展 が面白かったので細かく調べましたレポ!!(聖アンドレの殉教、哲学者セネカの死、アベルの死、眠るふたりの子供、などなどの感想)

すでに東京展は終了してしまってますが、フェルメール展に行った感想と合わせて、下書きにずっと入れっぱなしだったルーベンス展の感想をあわてて書き上げてUP!! なぜかというと……

というかルーベンス展!
めっちゃ楽しかった!!!行ってめちゃくちゃ良かった!!!

※1/20をもって現在はすでに終了

ルーベンス展:ルーベンスって誰!?

ルーベンスって、スペインの巨匠「ベラスケス」と混ざりがちで混乱しちゃうのですが……。こちらはベルギーの画家さん。まあどちらかというと……

という感じですね!

ルーベンスと言えば!!


僕はもう眠いんだ・・・パトラッシュ

というセリフ。
徹夜作業中によく心の中でつぶやいてたもんです。

というだけで実はよく知らない・・のですが。
主人公ネロが、ずっと見たいと思ってて、最後に目にすることができた奇跡の絵がルーベンスなんだそう。

アントワープ大聖堂にある「キリスト降架」と「聖母被昇天」。
気づかずスルーしてしまったのですが、美術展のなかで「4Kビジョン」のコーナーがあって。そこで実物ではないけど、4K高画質で実物大で見れるんだそう。

ちなみにルーベンスについては全然知らなかったので、

こちらを読んで、事前にみっちり勉強しました!!

目玉1:聖アンドレの殉教

「聖アンドレの殉教」は、かなり大きなサイズの作品!

時代は宗教革命。
そしてルーベンスの父は、カルヴァン派。

スペイン・ハプスブルグ配下だったアントウェルペン(今のベルギー)ではカトリック優勢。宗教革命カルヴァン派だったルーベンス一家は、幼少の頃ドイツに亡命していたのですが……お父さんが亡くなると、ルーベンス母、あっさりアントウェルペンにカムバック。

ルーベンス自身もさくっとカトリックに改宗

一方、宗教革命によって評判を落としたカトリック側。
その挽回にやっきになっている時代。宗教画にも変化が起こります。それまでの宗教画は厳かな”静”の絵画スタイル。それを聖書の内容がよりインパクトをもって信者に伝わるよう「劇場型」のドラマチック表現を教会側がリクエストしたのです。

その先駆けで代表だったのが、
ルーベンスというわけ!

磔にされた聖アンドレは、2日間で2万人の民衆に教え説き、そしてその民衆たちが怒ってローマ兵に詰め寄り……それでローマ指揮官(右の馬に乗った人)が駆けつけまさに磔から降架させようとするシーンを描いたもの。

劇のワンシーンみたい!めちゃくちゃドラマ感!!

肉体は隆々として、すがりつく指揮官の妻(キリスト教に改宗)をはじめ、人物はみんな激しい動きの瞬間を切り取った表情で。それでいてきっちりと棕櫚の枝(=殉教をあらわすモチーフだそう)とかアトリビュートは違和感なくちゃんと描かれて。

なんかとにかく凄まじく画力スゴイ・・・・

目玉2:哲学者セネカの死

「聖アンドレの殉教」も壁一面ぐらいの巨大サイズですが、こちらも大きい。

暴君で有名な皇帝ネロの家庭教師だった哲学者
陰謀に巻き込まれて自害を命じられ、静脈を切って死ぬというシーンです。
キリスト教では自死NGなので、ルーベンスは医師が血管を切るというシーンで描いているという解釈も。

参考 あなたはなぜ、ルーベンスの絵に感動できないのか?間違いだらけの日本人の西洋絵画の見方AERA dot.

ルーベンスはかなりのエリート。制作は工房での分業スタイルでかなりの作品数を生み出してるんです。

なのでこちらの「セネカの死」は弟子たちが描いてて、顔(首から上)だけBOSSルーベンスが描いてるんだそう。確かによく見るとタッチの丁寧さが微妙に違うような気がするのと、顔がやけに小顔!w(そして分業とは関係ないかもしれないけど失血死するわりにカラダがめっちゃマッチョ!)

それにしても顔だけ描くとか器用だな〜

気になった作品:アベルの死

これはそれほど目玉作品ではないのですが……「アベルの死」という作品。

これはもともと「ヨハネ斬首」が主題だったそう。

理由の解説があったかどうか忘れちゃったのですが、この絵はのちにルーベンスを含む何人かの画家の手が加わってるらしいのですが……

当初はなかった、頭(と犬)が描き加えられちゃった!!!!

首の部分をガン見したのですが。どこからが後から描いたのかよく分からない感じ・・・別で描かれたとは思えない・・・!!!

だけどここで問題が……

元の主題は「ヨハネ斬首」なわけだから頭部がくっついてたら意味的にNGだよね……

(いやそりゃそうでしょうよ……笑)
ということで後から「アベルの死」に主題が変更になったんだとか。

主題をそんな簡単な感じで変えちゃうの!??
け・・けっこう適当というか・・
ゆるい感じなのね・・・

ちなみにカインとアベルというのはアダムとイブの息子たちで、旧約聖書の話です。ヨハネ斬首の方は「サロメ」の主題でよく描かれるテーマですね。

習作がすごくたくさん!!!!

それまで「習作」というのをあまりよく知らなかったのですが・・・。

ルーベンス級の画家ですら!
作品を描くための練習ともいえる習作をかなりしているのも展示されていて、これがけっこう楽しかったです!!

注目:眠るふたりの子供

こちらは、亡くなってしまったお兄さんの子どもたち。
ルーベンスは自分自身も子だくさんでビッグファミリーだったのですが、お兄さんとも仲がよく、亡きあとは子どもたちを引き取ってたそうです。

愛にあふれる子どもたちの寝顔!!!

この作品は、入ってほぼスグのところに展示されてました。(たしか)

ポスターにもなってた「愛娘クララ」の肖像もそうなんですが、ぽっぺの赤みがすごく愛らしくて。やわらかそうでプニプニしてるんです!!!!

このブログはすごく参考になります!
透明感のあるほっぺの赤みは、補色でもある緑色で引き立ててるのだそう。

しかもこういう「ただ兄の子たちが可愛かったから描いた」といったことではなく(もちろんそれもあるかもしれないけど)習作を、宗教画作品のときに、天使の部分などに反映したりしたんだそう。

工房で習作用に使ってた彫刻とか。
というか「習作」ってもっとサラサラっと描いたものかと思ってたら、ガチの作品!なことにびびる・・・。今ならスマホでパシャ!って感じだよなあ、、、なんて思いつつ。

というかエリートなのに努力もたゆまぬ、ということなんですね。

ルーベンス展の見どころ

今回のルーベンス展が素晴らしかったところとしては、

◉イタリア時代に受けた影響
(カラヴァッジョとか、ルーベンスの前後における影響とか)

◉古代美術の彫刻など
(ルーベンスが習作に使った彫刻などが対照できるように展示)

という部分!
作品に対する理解が深まるし、めちゃくちゃ面白い!!

あとルーベンスは、
古代美術(彫刻)を絵画に活かす方法という論文とかも書いてるんです!

ルーベンスいわく、

現在(当時)のわれわれの肉体は運動不足である。
肉体をもっと使っていた古代美術彫刻の時代の肉体がいちばん美しい!なので古代彫刻を模写することがいちばんだ!

と言っててウケる!

「現代人は運動不足」っていつの時代も一緒なのねw

いちばん注意すべきは、
・彫刻は石なので
・模写はしても質感が固くならないように
・皮膚のやわらかさを表現する
・のが難しいけど留意すべし!

みたいな論文を書いてるらしくて。
なんか今のビジネスマンと、着眼点とかやってることが変わらないな〜という感じ。

とにもかくにも、

さすが国立西洋美術館だな〜という骨太の展示会でした!!!!

サスガ!!!!!

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